二十数年前の暑い夏の出来事


朝からとても暑い日だった。家の者はすべて出かけ、飼い犬と私が残された。どこか涼しいところに行こうと、生野の段ヶ峰に向かった。ゴルフ場から先は車が入れず、林道の途中の沢沿いに登っていたが、尾根に出る手前で道を間違えた。尾根はすぐだったので、藪こぎで突破しようとした。夏の盛りだったので、たいした時間ではなかったが結構疲れた。尾根にでると道らしきものにたどりついた。少し進むと、草も木も生えていない30坪ほどの落ち着いた丸い空間に出た。ここでしばらく休憩することにした。しばらくすると下の方から「チリーンチリーン」と鈴の音が聞こえた。登山者の熊鈴だろうか近づいてくる。もうすぐ現れるだろうと待ち構えていると、突然、音が反対側に移り、少しずつ遠ざかっていた。いったい何だったんだろうと困惑したが、不思議と怖さはなかった。犬と一緒だったが、まったく反応していなかった。道は登山道でなかったようで、その先で本来の道に出た。尾根道は一面の笹原で、とにかく暑かった。山頂では3人連れがビールを飲んでいた。どう見ても鈴の主のような人物はいなかった。何年か後に、同じ登山口から登っ間違えた地点は本来の分岐の少し手前だった。登山道に合流した道は見つけるとこができなかった。そもそも登山道と藪こぎした斜面の間には平らな空間などなかった。あの体験は、夏の暑さが引き起こした幻覚だったのだろうか。

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